『ONE PIECE FILM RED』の影で死屍累々…2022年に大コケしたアニメ映画3選

『ONE PIECE FILM RED』の影で死屍累々…2022年に大コケしたアニメ映画3選

『ONE PIECE FILM RED』の影で死屍累々…2022年に大コケしたアニメ映画3選 (C)PIXTA

ここ数年、アニメ映画が記録的な大ヒット作を連発している。2022年にも『ONE PIECE FILM RED』が興行収入180億を突破し、映画業界に激震を与えた。

しかしその一方で、まったくブームに乗ることができず、逆に驚かれてしまった“大コケ映画”も少なくない。

豪華クリエイターの無駄使い『バブル』

5月13日から公開された『バブル』は、オープニング3日間で約6,581万円という興行収入。公開規模が全国300館以上だったそうなので、とんでもない失敗作と言えるだろう。

物語としては、謎の泡に覆われて廃墟となった東京を、パルクールで駆け回る少年少女たちの恋愛劇。監督はアニメ『進撃の巨人』で知られる荒木哲郎、脚本は虚淵玄、キャラクター原案は小畑健と、豪華クリエイター陣によって制作された。

主人公を演じたのは、人気俳優の志尊淳。そしてヒロインを演じた“りりあ。”は、YouTubeやTikTokで活動するシンガーソングライターだ。

ヒロインは「不思議な歌声」を持つ設定だったため、話題性も兼ね備えたキャスティングとして理解できる。

ところが主人公とヒロインの演技がいずれも不評で、ネット上では《主人公とヒロインの声が残念すぎて…本業に任せて》《主人公とヒロイン声合ってなさすぎ》といった指摘が相次いでしまった。

なお、同作は劇場公開に先駆けて、Netflixで先行配信されていたのも不運の原因だろう。

売れなかったのはNetflixの失策が原因なのか、それとも映画自体に理由があるのか…。

戦犯は脚本?『グッバイ、ドン・グリーズ!』

2017年の大ヒットアニメ『宇宙よりも遠い場所』(よりもい)を生んだスタッフによって制作されたのが、2月18日公開の映画『グッバイ、ドン・グリーズ!』(ドングリ)だ。

冤罪をきっかけに始まる、少年たちの不思議な冒険を描いている。

花江夏樹、梶裕貴、花澤香菜といった人気声優が集まり、予告映像などでは、繊細で美しい画面作りも大きな話題に。

だが、公開初日3日間で動員2万5,040人、興行収入3,520万円と残念な数字が出てしまった。

実は「よりもい」スタッフ再集結と言いながら、脚本家の花田十輝は不参加。花田は賛否がありつつ、『ラブライブ!』シリーズや『STEINS;GATE』などをヒットさせた敏腕脚本家だ。

「よりもい」の成功を再現したいなら、花田の存在は欠かせなかっただろう。

「ドングリ」の脚本は、監督のいしづかあつこが兼任。だが、観客からは《花田先生の才能が爆発していれば…》《ドングリに足りなかったのはやっぱUR花田先生》と、“調子がいい時の花田”を望む声が多かった。

ブーム終焉か…『おそ松さん ヒピポ族と輝く果実』

イケボ声優が一堂に会し、女性ファンたちの間で大ブームを巻き起こしたギャグアニメ『おそ松さん』。新作アニメとして7月8日に公開された『おそ松さん ヒピポ族と輝く果実』は、そんなブームの終わりを感じさせる作品だった。

ろくに興行収入が発表されないほどの大コケだったのだが、公開初日3日間で約2,775万円ほどと言われており、驚きの結果なのがわかるだろう。

多種多様な来場者特典が1カ月にわたって配布される気合の入れようだったが、見向きもされなかったようだ。

2019年に公開された前作『えいがのおそ松さん』は、最終興行収入6.1億円だったので、ブーム自体が下火になっていた印象を受ける。

なお、同年3月には実写版「おそ松さん」が公開されたのだが、そちらは興行収入15億円を突破するヒット作になっていた。

アニメの実写化はよくコケるが、同作にかぎっては実写の方が成功した稀有な例というわけだ。

とはいえ、実写版は主演を人気アイドル『Snow Man』の面々が努めており、アイドル映画として受け入れられた結果。“おそ松ブーム”の恩恵は、あまり関係ないのかもしれない。

どれだけ豪華なクリエイターや声優などを集めても、アニメ映画はヒットするとはかぎらない。

ある意味、もっとも厳しい実力主義の世界なのかもしれない…。

文=野木

【画像】

Kostiantyn Postumitenko / PIXTA