『シン・仮面ライダー』にセクハラおじさんの影? 女性像が「昭和すぎる」と物議

『シン・仮面ライダー』にセクハラおじさんの影? 女性像が「昭和すぎる」と物議

『シン・仮面ライダー』にセクハラおじさんの影? 女性像が「昭和すぎる」と物議 (C)PIXTA

「仮面ライダーシリーズ」のリブート作品として、3月18日から劇場公開されている『シン・仮面ライダー』。劇中では、浜辺美波演じるヒロイン・緑川ルリ子が重要な役回りを担っているのだが、その描き方が「昭和的で古くさい」という指摘が上がっている。

アニメキャラのような仕草に賛否

「シン・仮面ライダー」の監督を務めるのは、ご存じ庵野秀明。その作風として、女性キャラクターの描き方がステレオタイプすぎることは、以前から指摘されていた。

『エヴァンゲリオン』シリーズでの女性キャラクターの描き方はもとより、前作『シン・ウルトラマン』では、長澤まさみ演じるヒロインの浅見弘子が議論の的になったことは記憶に新しいだろう。

ハイヒールを履く時にカメラがドアップになったり、巨大化した姿をローアングルで捉えられたり、至近距離で匂いを嗅がれたりと、さまざまな描写がセクハラではないかと言われていた。

そして最新作「シン・仮面ライダー」でも、女性キャラクターの描き方は変わっていない。

ヒロインのルリ子は冷静沈着で頭脳明晰、主人公の本郷猛を引っ張っていくキーマンとして活躍する人物。あまり女性らしい部分を覗かせず、本郷の前でも気丈に振る舞うのだが、中盤からやや怪しい雰囲気に。

とあるショッキングな出来事があった際、ルリ子は本郷に向かって「胸、貸して」と言い、彼の胸の中でさめざめと泣くのだ。令和の時代には早々見かけない演出ではあるだろう。

また、SHOCKERの追跡から身を隠すためのアジトでは、本郷と同じ部屋で着替えるという、観客をドキリとさせるシーンなども。

映画批評でお馴染みのラッパー・宇多丸は、3月31日に放送された『アフター6ジャンクション』(TBSラジオ)で、そうした「シン・仮面ライダー」の女性像について酷評。「旧オタク的な女性キャラクター」だとバッサリ論評していた。

また、観客の間でもルリ子の描き方に違和感を抱く人は多く、《おじさんの理想の女性像がかなりキツかった》《女性像の薄っぺらさは目に余るものがあったな》《今時男性に泣きたいから胸貸してはないだろ笑 トイレ行って泣いてこい》と指摘する感想が相次いでいる。

「シン・ウルトラマン」に続いて、女性の描き方が批判を浴びている「シン・仮面ライダー」。これは庵野監督が、女性像を現代の感覚にアップデートできていないことが原因かもしれない。

令和の映画監督に必要なセンス

他方で、庵野監督と同じようにオタク畑出身でありながら、今や国民的映画監督の1人となった新海誠は、価値観の積極的なアップデートを行っている。

2022年11月15日に『週プレNEWS』で掲載されたインタビューでは、『君の名は。』で瀧が三葉の体に入れ替わった際、胸を揉むギャグシーンについて、今だったら「ボツ」にすると語っていた。

「君の名は。」の公開翌年に「#MeToo運動」が起こったこともあり、世間の価値観が急変していると考えているらしく、「今の観客は受け入れないとジャッジした」とのことだ。

実際に昨年11月に公開された最新作『すずめの戸締まり』では、かつて新海監督が得意としていた女性キャラクターのフェティッシュな表現が一切消滅。老若男女が安心して楽しめるエンタメ作品として話題になった。

その成果なのか、同作はアジア圏で大ヒットを記録しており、中国では日本アニメで歴代最高の興行収入を塗り替えるほどの人気を博している。

一方、庵野監督の作品は「シン・ゴジラ」から「シン・ウルトラマン」、そして「シン・仮面ライダー」と、右肩下がりで売り上げを落としている。次回作こそ、時代の感性にあった新しいヒロイン像を提示してもらいたいものだ。

文=「まいじつエンタ」編集部

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