『ポケットモンスター』シリーズには多種多様な技が登場しており、それぞれに何らかのモチーフが設定されている。しかしそのなかには、マニアックすぎて元ネタがプレイヤーに通じていないものもあるようだ。
そこで今回は、知る人ぞ知る技の元ネタを3つ紹介しよう。
<その1>大相撲の“レア技”が由来に
『からてチョップ』や『とびひざげり』など、『かくとうタイプ』の技は名前を見ただけでどんな攻撃なのか想像しやすいものが多い。そのなかで例外と言えるのが、第1世代から存在した技『けたぐり』だろう。
あまり聞き馴染みがないかもしれないが、実は「けたぐり」は大相撲の「蹴手繰り」という同名の技が由来。これは相手の足を蹴って肩を叩く、あるいは手で引き寄せて倒すことで成立する決まり手だ。
一般的な知名度はあまり高くなく、現在は「蹴手繰り」を得意とする力士も少ないため、絶滅危惧種的な“レア技”だと言える。第68代横綱の朝青龍が使用し、「横綱の品格」を問われることになったのもひと昔前の話だ。
ちなみに海外版「ポケモン」で「けたぐり」が登場した際は、「Low Kick」という名前に意訳されていた。おそらく、相撲の技名が海外ユーザーには伝わりづらいという判断だったのだろう。
だが、『ポケットモンスターブラック・ホワイト』以降に「ローキック」という技が実装されてしまったため、そちらは『Low Sweep』(足払い)と呼ばれることになった。
<その2>『仮面ライダー』と深い関わり…
同じく「かくとうタイプ」の技である『ちきゅうなげ』も、モチーフが分かりにくい技の1つだ。それどころか、ポケモンがどんな動作をしているのかすら想像できない。
一応、ゲーム内では「引力を使い、投げ飛ばす」と説明されているが、演出は作品ごとに異なっている。
たとえば『ポケットモンスター赤・緑』では、相手を球体に変えて投げ飛ばす演出。続編の『ポケットモンスター 金・銀』に至っては、地球に酷似した物体を敵に投げつけるという、何の捻りもない攻撃だった。
ところがアニメ版『ポケットモンスター』の「ちきゅうなげ」は、相手を抱きかかえて宙を舞った後、地面へ叩き落とす技に一変。同アニメ後に制作された『ポケットモンスター ルビー・サファイア』からは、こちらのエフェクトが使用されている。
そんな「ちきゅうなげ」の元ネタとされているのは、1974年放送の特撮作品『仮面ライダーX』に登場した怪人・鉄腕アトラスの『地球投げ』だ。
文字通り、地球を模した鉄球を投げつける技で、「赤・緑」や「金・銀」のエフェクトに近いものだった。
<その3>ピカチュウの技に隠されたルーツ
『ボルテッカー』といえば、ピカチュウがTVアニメ『ポケットモンスター アドバンスジェネレーション』で習得した奥義。ここにも、意外に知られていないモチーフが隠されている。
元ネタとなったのは、1994年に発売されたメガドライブ用ソフト『パルスマン』だ。同作は横スクロールアクションゲームで、特定の条件を満たすとキャラクターが必殺技の「ボルテッカー」を繰り出す内容だった。
また、名前だけでなく技の演出も、電気をまとって突進するピカチュウの「ボルテッカー」と酷似している。
そもそも「パルスマン」は「ポケットモンスター」シリーズを手掛けるゲーム会社『ゲームフリーク』が開発しており、いわば同作のルーツにあたる作品。つまり「ボルテッカー」は、“ポケモンの祖”から継承された伝家の宝刀と言えるだろう。
ちなみにピカチュウは『大乱闘スマッシュブラザーズX』に登場した際、「最後の切りふだ」で「ボルテッカー」を使用できた。その技のエフェクトも、元ネタにそっくりだ。
もしかすると『スマブラ』シリーズの生みの親・桜井政博氏が、「パルスマン」をリスペクトしていることの表れかもしれない。
登場する技ひとつとっても、深いこだわりが感じられる「ポケットモンスター」シリーズ。よくライト層向けのゲームと揶揄されるが、実際にはこれ以上なくディープな作品なのではないだろうか。
文=「まいじつエンタ」編集部
【画像】
Masson / PIXTA