『水星の魔女』スレミオ“パートナー認定”の問題点 同性婚差別への無自覚な加担が争点に

『水星の魔女』スレミオ“パートナー認定”の問題点 同性婚差別への無自覚な加担が争点に

『水星の魔女』スレミオ“パートナー認定”の問題点 同性婚差別への無自覚な加担が争点に (C)PIXTA

アニメ『機動戦士ガンダム 水星の魔女』のスレッタ・マーキュリーとミオリネ・レンブランによる“同性婚エンド”をめぐって、激しい議論が巻き起こっている。8月6日に幕張メッセで行われたフェスのなかで新たな火種が投下され、もはや収集がつかない事態へと発展した。

公式が明言した“パートナー”の関係

この日開催された『アスティカシア全校集会』は、声優陣や主題歌を担当したアーティストが出演した公式イベント。その最後に、観客へのサプライズが待ち受けていた。

会場ではミオリネとスレッタによって、仲睦まじい掛け合いが繰り広げられることに。決闘に負けてホルダーではなくなったことを気にするスレッタに、ミオリネは「ホルダーとか関係なくあんたは私のパートナーなんだから胸張りなさい」といったセリフを返していた。

2人の関係性はアニメ内ではハッキリと示されておらず、放送終了後に『月刊ガンダムエース』2023年9月号に掲載されたインタビューで、スレッタ役を演じた声優・市ノ瀬加那が「結婚」という言葉を使ったことで話題を呼んだ。

しかし後日、電子版が発売された際に「結婚」の文字が消去され、『ガンダムエース』と『水星の魔女』、『サンライズ』がそれぞれ謝罪文を発表。該当箇所は“校正ミス”だと発表され、《皆様一人一人の捉え方、解釈にお任せし、作品をお楽しみいただきたい》といったメッセージが発信された。

公式見解で同性婚エンドが否定されたことで、ネット上は大荒れしているのが現状。そんななか、今回のイベントであらためて2人が「パートナー」だと明言されたことで、一部のファンたちは安堵を覚えたようだ。

パートナー宣言は同性婚否定派への忖度?

しかし今回の対応から浮かび上がってくるのは、何としてでも「結婚」という表現を避けようとする態度だろう。SNS上では《意地でも結婚って使いたくないんだな》《ここまでして「結婚した」とは絶対に言いたくない意図は何?》《同性婚は認めないけど、カップリングで商売したいっていうのはものすごく不誠実》と反発する人も多い。

また、「結婚」の代わりに「パートナー」という表現を持ち出したことで、《結婚を削ってパートナーで締めたのにはめちゃくちゃ政治的理由があるよ》《昨今の同性婚裁判のアレコレや反対派の事がちらついてしまう》といった憶測も飛び交っている。

「そもそも同性婚の文脈において、パートナーという言葉は非常にセンシティブです。日本では同性婚が認められておらず、いくつかの自治体で『同性パートナーシップ制度』が導入されていますが、法的効力の欠如など、多くの限界や制約を抱えています。

2019年からは同性婚できないことの違憲性を問う『結婚の自由をすべての人に』訴訟が複数の裁判所で行われていますが、そこでは国が『同性婚でなくとも、パートナーシップ制度があれば不利益は解消されるのではないか』といった態度を取っていることが、大きな争点となっていました。

そんななか、よりによって同性婚を否定されたキャラクターに『パートナー』をあてがうのは、あまりにも無神経でしょう。あるいは現在の日本ではパートナーシップ制度しか認められていないため、深い思慮もなくその基準に合わせたのかもしれませんが」(サブカル誌ライター)

ファンの間では、『水星の魔女』を同性婚禁止の国に輸出するため、「結婚」という表現が避けられたという説も浮上している。万人が認めるスレッタとミオリネの“祝福”は、いまだ実現しそうにない。

文=「まいじつエンタ」編集部

【画像】

9nong / PIXTA