『チ。』は誰も見たことのない漫画!? 人間の“知的冒険”を描いた異色作

『チ。』は誰も見たことのない漫画!? 人間の“知的冒険”を描いた異色作

『チ。』は誰も見たことのない漫画!? 人間の“知的冒険”を描いた異色作 (C)PIXTA

ほとんどの漫画家は他人には真似できない、オリジナリティーのある作品を目指すもの。しかし、それを実現できるのは、ほんの一握りの才能だけだ。現在、漫画好きの間で話題沸騰中の『チ。―地球の運動について―』という作品は、まさにそんな“奇跡”の産物と言えるだろう。

『チ。―地球の運動について―』は2020年9月から『ビッグコミックスピリッツ』で連載が始まった作品。「タイトルだけ聞いたことがある」という方も多いかもしれないが、『マンガ大賞2021』の第2位、『このマンガがすごい!2022』オトコ編の第2位など、さまざまな栄誉に授かっている。また単行本は5巻しか発売されていないにもかかわらず、すでにシリーズ累計160万部を突破したという。

一体なぜ同作は、それほどまでに読者を惹きつけるのだろうか。もっとも大きな要因は、「地動説」をテーマとして繰り広げられる“知的冒険”にある。

同作の舞台は、「天動説」が主流とされている15世紀前半のヨーロッパ。社会の中心は「C教」という宗教であり、異教徒は弾圧され処刑されるのが常だという。主人公のラファウは、神童と呼ばれるほど賢く、合理的な生き方をしている少年だった。

ところがある日、「地動説」を研究していたフベルトとの出会いですべてが変わる。「地動説」は「天動説」とは真逆の理論であり、「C教」にとってはまさに異端的発想。もし興味を持っていることが明るみになれば、恐ろしい仕打ちに遭うはずだ。

しかしラファウは、抗いがたく「地動説」に魅入られてしまう。それがたとえ、自らの命を賭すことになっても──。

「地」「血」「知」…そして「痴」でもある

コミックスの帯には、「命を捨てても曲げられない信念があるか? 世界を敵に回しても貫きたい美学はあるか?」という一文が綴られている。この言葉が象徴する通り、同作では真理の追究に命を賭けた男たちのドラマが描かれてきた。

いつの時代も、世界に生きる大半の人間にとって、もっとも価値があるものは「平穏な日々」だ。彼らから見れば、「知」のために命を懸ける主人公たちの生き様は愚の骨頂。実際に「C教」の人々は、異端を処刑するためなら「血」を流させることも一切ためらわない。

だが、そこで同作は核心的な問いを投げかけてくる。真理の探究から目を逸らして生きることに、本当に意味はあるのだろうか、と…。主人公たちの生き様はまばゆく、人間の尊厳を体現している。逆に考えることを放棄した大衆たちの姿は、「痴」と表現すべきものだ。

またダイナミックな物語だけではなく、インパクトのあるセリフや構図も魅力の1つ。決して派手なアクションシーンがあるわけではないが、1コマ1コマに迫力があり、見る者が引き込まれることは間違いない。同作には読者の想像を超えるスリル感、骨太のストーリー、そしてド迫力の演出が同居している。

真実を知りたい、答えを知りたい。心の底から湧き出す「知的好奇心」は、過去の偉人たちを衝き動かしてきた。真理に迫った男たちが紡ぐストーリーを、ぜひその目で見届けてほしい。

文=「まいじつエンタ」編集部

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