アニメ頼りのJ-POPアーティストたち…タイアップなしでは生きていけない現状

幾田りら 

幾田りら 画/彩賀ゆう (C)まいじつ 

昨今の映画界がアニメ作品頼りとなっているように、音楽業界もまた人気アニメとのタイアップに熱を注いでいる。アニメに頼らなければ映画も音楽もヒットしない…そんな時代へ突入したようだ。

たとえば、人気音楽ユニット『YOASOBI』も、最近はすっかりアニソンアーティストになっている。昨年11月にリリースされた楽曲『祝福』がアニメ『機動戦士ガンダム 水星の魔女』(TBS系)のOP曲に選ばれ、楽曲『アイドル』は4月より放送開始のアニメ『【推しの子】』(TOKYO MX ほか)のOP曲に選ばれている。

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「アイドル」のMVは、公開からわずか1週間足らずで2100万回再生を超え、5月1日時点でYouTubeの人気急上昇中音楽ランキング第2位にランクイン。一方、『祝福』もBillboard JAPANチャートにおけるストリーミング累計再生回数1億回を突破するなど、爆発的な人気ぶりを見せつけている。

大ヒットという意味では、歌手のAdoも映画『ONE PIECE FILM RED』で歌姫・ウタの歌唱パートを務めて一躍時の人に。中でも楽曲『新時代』は歴代4位の早さで、ストリーミング累計3億回再生を突破。それまでも新曲を出すたびに話題をさらってはいたが、『ONE PIECE』とのタイアップからは、かつてないほどの恩恵を得たに違いない。

「どのように売るか」が問われる時代

ほかにも『Official髭男dism』やAimerなど、ありとあらゆるアーティストがアニメの主題歌に起用されている。最近でいえば、『「鬼滅の刃」刀鍛冶の里編』(フジテレビ系)の主題歌に、ロックバンド『MAN WITH A MISSION』が起用されたのも記憶に新しいだろう。

「悲しいことに昨今のJ-POPアーティストは、タイアップ楽曲以外は見向きもされない傾向にあります。その典型的な例が〝あのちゃん〟ことanoの『チェンソーマン』(テレビ東京系)第7話ED曲『ちゅ、多様性。』から見てとれます。同楽曲の『THE FIRST TAKE』は、5月1日時点で再生回数1200万回を突破しているのに対し、その12日後に配信された同じくanoが歌う『普変』は再生回数356万回にとどまっています。これだけ人気の差がくっきり出てしまうと、アーティストがタイアップに寄りかかってしまうのも無理はない気がします」(音楽ライター)

日本の音楽業界はなかなか厳しい状況にあるようだが、お隣の国・韓国発のアーティストは、アニメに頼らなくてもメガヒットを連発している。

一例を挙げると、『BLACKPINK』のメンバー・JISOOのソロデビューシングル『FLOWER』は、4月26日公開の『JAPAN Heatseekers Songs』で首位を獲得。3月31日に配信されたMVは、すでに1.7億回再生を突破している。

そのほか、『IVE』の楽曲『I AM』は5800万回再生、Agust D(『BTS』のSUGA)の『People Pt.2(feat. IU)』は2050万回を突破するなど、YouTubeの再生回数だけを見ても破竹の勢いなのが分かるはずだ。これはひとえに、韓国発グループの売り出し方が優れているからにほかならない。

現代はAIを駆使すれば、誰でも〝よくできた音楽〟が作れる時代。「何を作るか」よりも「どのように売るか」が求められているからこそ、J-POPアーティストはアニメとのタイアップという手っ取り早い方法に飛びつきたくなるのだろう。

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