TVerは“有料会員”を作るべき? 赤字決算で民放テレビ局の苦戦つづく

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株式会社TVerの2023年3月期(第17期)決算が厳しい結果だった。最終損失2億5200万円で赤字転落したという。民放各局が横断的に自局コンテンツを配信しているTVerだが、その実情は…。

「TVerを含む配信広告収入は、各局が公表しています。決算説明資料に記載がある局を見ると、昨年度決算で日本テレビが約51億円、TBSが約57億円、フジテレビが約49億円。およそ50億円前後の水準です」(メディアジャーナリスト)

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一応は利益を生み出しているようだが、この数字は地上波の足元にも及ばない。

「地上波のCM売上高を見ると、日テレが2369億円、TBSが1628億、フジが1603億円と、配信広告収入とは比べ物にならない。はっきり言って、TVerはテレビ局にとって〝金になるコンテンツ〟ではありません」(同)

地上波のスポンサーを呼び込むツール?

TVerをめぐっては、再生回数が百万単位で記録されることも多くなり、サービスとして好調がうかがえる。

だがこうして見てみると、盛んに宣伝される「◯◯万回再生突破!」という謳い文句は、ほとんど意味がないことが分かるだろう。

事実、TVerはテレビ放送事業の宣伝に用いられているだけなのだ。

「無料なだけに収益化には限界があり、現状、TVerは『稼ぐためのコンテンツ』ではなく、『稼げるコンテンツを作るための呼び水』にすぎない。再生回数を強調するのは、『この番組にはこれだけの注目度があるので、放送時のCMを出稿してください』という、スポンサー向けの宣伝なのです」(前出・ジャーナリスト)

表向きは「ネットの時代」だ何だと言いながら、結局はネットを使って地上波に呼び込むビジネスモデルから抜け出せていないのが現状だ。

「そもそも、TVerは広告が長いし頻繁。1分や30秒の広告を挟んできます。このように、見逃し配信を見ようとしても広告の嵐で、ユーザーの足を遠のかせている。もちろんテレビはスポンサーありきなので、ここが難しい問題です。

テレビ離れの中、配信とはいえ、テレビコンテンツを見てくれる貴重なユーザーなのですから、もっと利用者目線のサービスを展開すべきでしょう。YouTubeのように、広告を飛ばすことができる有料のプレミアム会員などを作るべきでは?」(テレビライター)

TVerの出現によって活気を取り戻したかのように言われているテレビ業界だが、全くそんなことはない。

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