
安倍元首相を“悪役”として風刺?『仮面ライダーBLACK SUN』の石ノ森イズムに賛否 (C)PIXTA
10月28日より『Amazon Prime Video』にて独占配信が始まった特撮ドラマ『仮面ライダーBLACK SUN』が、大きな賛否を巻き起こしている。安倍晋三元首相を思わせる登場人物などが描かれており、保守派のネットユーザーを激怒させているのだ。
※『仮面ライダーBLACK SUN』の内容に触れています
同作は1987年に放送された『仮面ライダーBLACK』を、俳優・西島秀俊、中村倫也を起用して現代に蘇らせた作品。「仮面ライダー」シリーズでは珍しい成人向けコンテンツとなっており、人間と怪人の“共存”を掲げた世界の物語が描かれている。
しかしその世界観には裏があり、人間の姿をした怪物は虐げられ、人々と衝突の日々が繰り返されていた。両者の溝が深まる中で、若き人権活動家・和泉葵(平澤宏々路)は、怪人の頂点である“創世王”の時期候補で、またの名を「ブラックサン」と呼ばれる南光太郎(西島)と知り合う。
そしてもう1人の候補であり、「シャドウムーン」の異名を持つ秋月信彦(中村)が南と出会うとき、人々の運命を揺るがす事態に陥る…。
他方で、南や秋月といった中心人物とは別に、怪人を利用したビジネスで私服を肥やしている総理大臣・堂波真一(ルー大柴)もキーパーソン。彼は三神官のダロム、ビシュム、バオラムらが所属する日本の政治を担う組織『ゴルゴム党』と蜜月な関係にあり、“悪役”的な立ち位置のキャラクターと言えるだろう。
自民党批判のメッセージ?
現代社会の抱える闇に切り込むような内容だが、とくに曲者なのが総理大臣・堂波真一。物語の真相には真一の祖父も絡んでおり、日本政府の“闇”が描き出されている。
その描き方は、祖父・岸信介の代から「世界平和統一家庭連合」(旧統一教会)との関係を疑われている安倍元首相を思わせる部分も。ほかにも麻生太郎副総裁や岸田文雄首相など、「自民党」関係者を連想させるキャラクターが登場していた。
実際に「自民党」を支持する人々は、特定の政治家への風刺を読み取ったようで、《仮面ライダーBLACK SUNは絶対に見ない。あのような亡くなり方をされた安倍晋三元首相をヤジった作品なんてヘドが出ます》《仮面ライダーを利用して安倍政権へのヘイトスピーチしてるようにしか思えない》《反日臭がプンプンしてて、気持ちの悪い特撮ドラマだった》《このタイミングで、安倍元総理に寄せた外道悪役総理を出す時点で酷い》《安倍さんや自民党、ひいては統一教会を揶揄した幼稚な現政権批判は本当に下らない》といった声が噴出している。
その一方で、《フィクションは世相や風潮を反映したり、風刺は当然じゃない? 現実をモデルにして何が悪いのか》《むしろ話題になる前から、統一教会と自民党の関係などを脚本に組み込んで制作されて、現実が追いついた今に配信されたというのが熱い展開だろ》といった反論を繰り広げる人も。
たしかに同作は今年3月にはクランクアップを迎えており、安倍元首相の痛ましい事件が起きたのは撮影終了後のことだ。意図的な風刺ではなく、日本社会を独自の視点から描こうとした結果、ある種のシンクロが生じたのではないだろうか。
そもそも「仮面ライダー」シリーズの生みの親・石ノ森章太郎の作品は、政治的な主題を直視したものだった。日本の政治が混乱している今だからこそ、その原点に立ち返る意味でも、「仮面ライダーBLACK SUN」が制作される意味はあったのだろう。
文=大獄貴司
【画像】
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