
西尾維新の言語センスが限界突破!? ジャンプ『暗号学園のいろは』翻訳担当がギブアップ宣言 (C)PIXTA
『週刊少年ジャンプ』で連載中の漫画『暗号学園のいろは』が、思わぬ窮地に立たされている。同作はカルト的な人気を誇る小説家・西尾維新が原作を担当しており、さまざまな言葉遊びが仕込まれているのだが、その言語センスが“翻訳不可能”な領域に踏み込んでしまったらしい。
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日本語の限界に挑んだ暗号バトル
同作は、生徒たちに暗号解読が課せられる「暗号学園」を舞台とした学園ストーリー。主人公のいろは坂いろはが、ひと癖もふた癖もあるクラスメイトたちと暗号で競い合っていく…という異色の漫画だ。
ところで現在「ジャンプ」は、毎週海外向けの翻訳版が配信されており、海外ファンもタイムラグなしで作品を楽しめる。当然、「暗号学園のいろは」も翻訳作品に含まれていた。
しかし2月19日、同作の翻訳を担当していたKumar Sivasubramanian氏が、自身のツイッターで驚きの内容を報告。第13話をもって翻訳から外れることになったというのだ。
https://t.co/T2gL5a5uXK Sorry, peeps, Chapter 13 will be my last.
— KumarSivasubramanian (@kumarprime) February 19, 2023
というのも同作では、毎回のように難解な暗号を使ったバトルが繰り広げられてきた。そしてその多くは、日本語の性質に強く依存したものとなっており、翻訳する際には多大な労力が求められる。
さらに第10話「昨日の戦争は今日も戦争」からは、高度なリポグラムを応用した「失言半減質疑応答」というバトルが繰り広げられることに。日本語の五十音を前提とした高密度の言葉遊びが、延々と続く展開となっており、もはや“翻訳不可能”な領域に達していた。
ちなみに翻訳版では、日本語の音訳をそのままアルファベットで表記する苦肉の策がとられたのだが、もちろん海外の読者には理解できるはずもなかっただろう。
言葉遊びのロスト・イン・トランスレーション
Sivasubramanian氏は、そうした翻訳の難易度の高さ、さらに週刊連載というスケジュールの厳しさもあり、同作の翻訳担当を降りることにしたようだ。
日本の読者たちもこれには納得するしかないようで、《通常のギャラと納期では絶対やりたくない奴》《これは流石に同情を禁じ得ない》《自分で創作しなきゃいけないレベルの高難度》《画像だけで読みたくなくなるwww これを翻訳とか可哀想すぎ》といった声が上がっていた。
ちなみに西尾作品といえば、日本語の性質を利用した“言葉遊び”に満ちていることでお馴染みであり、いずれも翻訳上のハードルを抱えている。しかし過去作については、必ずしも国内でしかヒットしていないわけではない。
たとえば、西尾の代表作の1つとして有名な小説『物語シリーズ』では、2015年から英語翻訳版がリリースされている。同作も無数の言葉遊びで満ちているが、見事な翻訳が行われたようで、海外読者によるAmazonレビューも軒並み高評価となっている。
「暗号学園のいろは」の翻訳も、後任として別の担当者が就くことになる予定。無事に翻訳できるかどうかはともかく、その苦労を思うと敬意を払わざるを得ない…。
文=「まいじつエンタ」編集部
【画像】
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