日本版ジョーカー!? 大人も沼らせる“魅惑のダークヒーロー”ロールパンナ

日本版ジョーカー!? 大人も沼らせる“魅惑のダークヒーロー”ロールパンナ

日本版ジョーカー!? 大人も沼らせる“魅惑のダークヒーロー”ロールパンナ (C)PIXTA

映画『ジョーカー』の公開以来、善悪の常識を超えたダークヒーローの存在は、世間の人々を強く惹きつけるものとなった。日本ではあまりその波に乗った作品が出ていないが、実は長寿アニメ『それいけ!アンパンマン』(日本テレビ系)には、ロールパンナという“究極のダークヒーロー”が存在している。

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境遇があまりに不憫なヒーロー

ロールパンナは、白い布をマスクのように身につけ、リボンによって戦うパン戦士の1人。メロンパンナの姉にあたる存在として、ジャムおじさんによって作り出された。

その誕生の経緯は、1994年に放送された『ロールパンナのひみつ』というエピソードにて描かれているのだが、悲劇の改造人間“仮面ライダー1号”に匹敵するほどインパクトが強い。

ジャムおじさんはメロンパンナが見つけた「まごころ草」の花粉を材料として、彼女と同じような善のヒーローを作り出す予定だった。しかし生地を寝かせている最中、ばいきんまんによって、ひそかに「ばいきん草」のエキスを混入させられてしまう。

その結果生まれたのは、善と悪、両方の心を持つパンだった。ロールパンナは誕生初日からアンパンマンに牙をむき、どんぶりまんトリオを襲撃するなど、悪事のかぎりを尽くす。

しかしその一方で、生地にメロンパンナがメロンジュースを混ぜていたこともあり、彼女にだけは強い執着を見せる。メロンパンナが呼びかけることで、善の心が反応するのだ。そうして善と悪の狭間で苦しみ続ける、ダークヒーローとしての人生…ならぬパン生が幕を開ける。

主役映画では大人が号泣

ロールパンナはアンパンマンに会うと悪の心に呑まれ、『ブラックロールパンナ』になってしまうため、普段は人気のない谷で孤独に過ごすことを強いられている。

それにもかかわらず、定期的にばいきんまんに戦いを仕向けられている模様。「アンパンマン」ワールドの中でも、とびきりハードな生き様と言えるだろう。

恐ろしいのは、生みの親であるジャムおじさんが、ロールパンナの苦境に対して一切責任を取ろうとしないことだ。アニメ第1319話『ジャムおじさんとブラックロールパンナ』で2人は対面するのだが、ジャムおじさんは「自力でどうにかして」と静観のスタンスをとっていた。

ヒーローにもヴィランにもなりきれず、孤独に生きるロールパンナの姿は、子どもだけでなく大人の心も鷲掴みに。その魅力を最大限に描いた作品としては、映画『それいけ!アンパンマン ゆうれい船をやっつけろ!!』の存在も外せないだろう。

同作の物語をざっくり説明すると、ロールパンナに残された善の心が消失するという内容。完全に悪側の兵器と化したロールパンナが、アンパンマン陣営を追いつめていく。

しかし作中ではロールパンナの心の機敏が丁寧に描写されており、大人の視聴者からも《ブラックロールパンナの悪の美学に見惚れる》《ラストは嗚咽を漏らして号泣した》と絶賛されている。

背負った設定が重すぎて、公式としても扱いづらいのか、最近のアニメではロールパンナの登場率は低め。日本が誇るダークヒーローとして、2023年にはぜひ活躍してほしい。

文=ゴタシノブ

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