今「学生芸人」が熱い!?『M-1』無双のインテリお笑いマニアたち

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お笑い好きの人間が集まる環境は、おのずと笑いのレベルが高くなる。『中川家』から『霜降り明星』まで、『M-1グランプリ』の歴代優勝コンビは実に3分の1以上がお笑いの本場・大阪出身。お笑いコンビ『ナイツ』の塙宣之はかつて「サッカーでいえば、大阪はブラジル」と例えたが、お笑いの好きな土地柄に住んでいる以上、センスが磨かれていくのも当然のことだろう。

しかし「お笑いといえば大阪」という風潮を、学生芸人が変えるかもしれない。

学生芸人というのは、大学のお笑いサークルに所属するアマチュア芸人のこと。最近では学生芸人としてキャリアをスタートさせ、その後プロとして名を馳せる芸人が増えている。

先日放送された『M-1グランプリ2020』(テレビ朝日系)で見事優勝をかざった『マヂカルラブリー』のツッコミ担当・村上は、『法政大学お笑いサークルHOS』出身。大学お笑いのナンバーワンを決める『大学お笑い日本一決定戦』で二度にわたって優勝を果たすなど、当時からその才能は抜きん出ていた。

また『キングオブコント2018』(TBS系)の覇者にして、今やテレビに引っ張りだこの『ハナコ』岡部大は、『早稲田大学お笑い工房LUDO』で鍛えた学生芸人だった。「早稲田大学お笑い工房LUDO」からは他にも、『にゃんこスター』のアンゴラ村長やひょっこりはんといった人気若手芸人が輩出されている。

そして『慶應大学お笑い道場O-keis』は令和ロマン、『上智大学お笑いサークルSCS』はラランドがかつて在籍していた団体。両者共に結成5年未満という若さながら「M-1グランプリ」の準決勝へと勝ち上がっており、学生芸人たちの活躍はなんとも華々しい。

全国民の「お笑いマニア化」が進行中?

一体何がきっかけで、学生芸人界隈がここまで盛り上がっているのだろうか? 大きな理由の1つは、『大学芸会』の存在にある。「大学芸会」は2011年にスタートした、各大学のお笑いサークル対抗コンテスト。「大学版M-1グランプリ」とも呼べるこの大会によって、学生たちに同一の目標が与えられ、競い合いが活発化。学生芸人全体のレベルが上がったことで、いつしか「学生の催し物」から一般客をも巻き込む大きなコンテストへと成長していった。

2015年以降は「大学芸会」の団体戦部門は『NOROSHI』へと名前を変え、吉本興業や電通などの大手企業からの協賛を受けるように。そして優勝サークルに賞金やNSCへの特別奨学金が授与されるなど、プロへの登竜門へと進化を遂げていく。結果として「コンテストをきっかけにプロになる」という新しいムーヴメントが、学生芸人たちの間に浸透していったのだ。

また、受け手側のお笑いマニア化の進行も、学生芸人の人気に拍車をかけている理由の1つ。「M-1グランプリ」の毎年の盛り上がりをはじめ、『四千頭身』や『EXIT』といった第七世代を多数輩出した『ネタパレ』(フジテレビ系)、『千鳥のクセがスゴいネタGP』(フジテレビ系)や『有吉の壁』(日本テレビ系)といった純粋なネタ番組が相次いでゴールデン化。昨今のお笑い番組の増加と、その勢いは凄まじい。テレビやネットなどで多くのお笑いを見られる環境が生まれたことで、受け手がマニアックなネタも受け入れやすくなっている。そこで「お笑いマニア」的な学生芸人の作る笑いが、より刺さりやすくなったのだろう。

つい先日も、「慶應大学お笑い道場O-keis」所属の『ブラウン管ベイビー』によるネタが、Twitter上で大きな話題に。「ブラウン管ベイビー」は、「大学芸会2019」の個人戦で優勝した経歴をもつコンビ。YouTubeにアップした「修学旅行」というネタは、漫才のフォーマットを利用した“メタ”な仕掛けとなっており、ネット上で《発想が天才》《漫才というシステムをハックしてて面白い》と絶賛する声が上がっていた。

今も昔も、大阪がお笑いの町として圧倒的な存在感を示しているのは事実。お笑い界のトップ層に、大阪出身の芸人たちが君臨する状況も変わらないだろう。とはいえその一方で、学生芸人という新しい波が業界に大きな変化をもたらす可能性も。芸人が「どこ出身?」と問われた際に、出身地ではなくサークル名を答える時代も、そう遠くはないのかもしれない。

また芸人が「何大学のサークル出身か」という切り口で語られるようになれば、お笑いが出身地というハンデから無縁になる。そのため、今まで見たこともない新しい才能が芽生えるチャンスも生まれるだろう。

学生芸人がお笑い界に、どんな嵐を巻き起こすのか…。今後の動向にも注目していきたい。

文=富岳良

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