『チェンソーマン』マキマ“祈祷”の元ネタは? 作中に散りばめられた映画オマージュ

さらに高度な元ネタ探しへ…

よりマニアックなところでも、藤本の映画に対する異常な愛情を読み取れる。「チェンソーマン」の食事シーンに注目してみると、机の上に載っている皿やコップの水の量が同じ高さになっていたり、左右対称になっていたりする。たとえば第53話の天使とアキ、第72話のアキと岸辺の会話シーンなどで、こうした奇妙な演出を確認できるはずだ。

この小道具へのこだわりは、日本を代表する映画監督・小津安二郎のセンスを想起させる。実際、皿やコップの水量の高さを合わせるという一種偏執的な演出は、SNSで話題になったこともあるほど有名な手法。映画マニアの作者が熟知していたことは間違いない。

最後に紹介するのは作中終盤、第83話『死・復活・チェンソー』のワンシーン。マキマ宅の廊下に、悪魔の眷属の死体がずらりと並べられているシーンだ。チェンソーマン復活の儀式に向けた不気味な雰囲気に包まれた場面だが、こちらはアリ・アスター監督の『へレディタリー/継承』が元ネタだと思われる。「へレディタリー」も欠損した人間の死体を並べ、悪魔の王・ペイモンを復活させるシーンが登場するが、このグロテスクでありつつも、厳かな空気感を再現したかったのだろう。余談だが、コミックス3巻の作者コメントで藤本は「ヘレディタリー大好き!」と同映画のタイトルを明記したこともあった。

今回は紹介できなかったが、作中にはまだまだ映画のオマージュが隠されている。ポップな漫画作品というだけではなく、古今東西の名作・迷作をパッチワークして作られた「アート」としても「チェンソーマン」を楽しめるのだ。

文=富岳良
写真=まいじつエンタ
■『チェンソーマン』11巻(藤本タツキ/集英社)

【あわせて読みたい】