反体制(笑)の時代は終わり?『アジカン』後藤正文のメッセージが社会に刺さる

反体制(笑)の時代は終わり?『アジカン』後藤正文のメッセージが社会に刺さる

反体制(笑)の時代は終わり?『アジカン』後藤正文のメッセージが社会に刺さる (C)PIXTA

7月7日、国内最大級の音楽イベント『ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2021』(以下:ロッキン)の中止が急遽発表された。コロナ禍で巻き起こっている社会の理不尽を凝縮したような出来事に、多くのミュージシャンたちが憤り、その声に共感する人々も続出している。

イベントが中止にいたったのは、「茨城県医師会」の代表者がフェス主催である茨城放送に要望書を持ち込んだことがきっかけ。それによって、ロッキン側に対して「今後の感染拡大状況に応じて、開催の中止または延期をすること」「さらなる入場制限措置を講ずるとともに、観客の会場外での行動を含む感染防止対策に万全を期すこと」といった要請が行われた。

しかし、すでにイベントの開催は直前に迫っており、中止の判断を先延ばしにすれば、さらに多額の支出が生じてしまう状況。また入場制限や感染防止策の見直しも難しいということで、やむなく中止という決断にいたったようだ。

より大規模な感染リスクがある「オリンピック」が強行される中で、科学的根拠が不明なまま一方的な要請によって中止となった今回のイベント。出演が予定されていた『ASIAN KUNG-FU GENERATION』のボーカル・後藤正文は、メディアプラットフォーム『note』にてその心境を赤裸々に綴っている。

後藤は冒頭から、「ロッキン」の中止に対して《率直に言って、とても残念だ》という感情を吐露。今回のフェスについて、コロナ禍を乗り越えて〝新しい日常〟を作り出すためのきっかけと捉えていたことを明かす。そして医師会のオリンピックに対するスタンスに疑問を呈すると共に、コロナ禍における政府の失策などを批判した。

当事者としての力強いメッセージに、多くの人が心を動かされたようだ。ネット上では《全くその通りだと思います。全てが他人事で自分ファーストの政治を許しちゃいけない。この国は自分たちの国なんですよね》《同じ怒りをずっと抱えてます。私の声は小さなものでしかないですが、声をあげ続けています》《Gotchさんの怒りが伝わった。私もずっと怒ってます》《ゴッチのnoteの言う通り、エンタメを守るために政治にきちんと向き合いたい》といった共感の声が続出している。

ファッションではなくなったロックミュージックの「反体制」

ロックミュージックは、良くも悪くも反体制運動と結び付けられてきた歴史があり、一般的にメッセージ性が強いとされている音楽ジャンル。しかしジャンルが形骸化した現在は、一部のハードコアなバンド(音楽性ではなく)を除いて、反体制=ロックというスタンスは薄れてきたように感じる。特にここ現代日本において反体制を歌っても、たんなる〝ポーズ〟として受け取られるだけで、ほとんどは冷笑されるだけだった。

ところがコロナ禍において、アーティストはまさに当事者という位置に置かれている。そこから放たれる反体制のメッセージは、理想論でも机上の空論でもなく、当事者として意味を持ち、大衆の共感を集めることだろう。

中には、はやくも激情を作品として表現するアーティストも現れている。シンガーソングライター・大森靖子が〝共犯者〟として関わる女性アイドルグループ『ZOC』は、6月9日に『CO LO s NA』という楽曲をリリース。コロナと殺すなのダブルミーニングとなっている通り、コロナ禍の社会を当事者目線で歌い上げた曲で、「誰を殺してるかちゃんと見ろ」「生活の中にいらない人間はこんなに綺麗」などと主張していた。

アーティストたちは現在、ここ数十年で最大級の危機を迎えている。しかしだからこそ、深い闇のなかでひときわ強く輝く希望がありえるのかもしれない。

文=雪之丞

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