ジャンプからマッチョキャラ消失… 『キン肉マン』『北斗の拳』が生まれなくなったワケ

ジャンプからマッチョキャラ消失… 『キン肉マン』『北斗の拳』が生まれなくなったワケ

ジャンプからマッチョキャラ消失… 『キン肉マン』『北斗の拳』が生まれなくなったワケ (C)PIXTA

『北斗の拳』や『キン肉マン』など、かつて『週刊少年ジャンプ』では筋骨隆々なマッチョキャラたちが全盛を誇った時代があった。だが、最近の「ジャンプ」主人公は一見戦闘に向いていないような細身のキャラがほとんど。往年のファンはそうした時代の変化を嘆いているが、一体なぜ同誌からマッチョキャラが減っていったのだろうか?

そもそも時代の転換点だったと言われるのは、今から30年ほど前の1990年代のこと。その前の時代である1980年代の「ジャンプ」主人公には、孫悟空やケンシロウなど、丸太のように太いボディをもつマッチョキャラが多数いた。しかし1990年に連載が始まった冨樫義博の『幽☆遊☆白書』を皮切りに、『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-』や『封神演義』など、線の細い少年・青年を主役とした作品が現れてくる。1997年以降、同誌の看板となった『ONE PIECE』もその1つに数えられるだろう。

これに対してよく言われるのが、「1990年代から読者の趣味が変わった」という説だ。かつてのような男らしいキャラではなく、どちらかといえば中性的な男性が求められるようになった…と推測する人が多い。

ところが歴史を振り返ってみると、実際の真相は逆だと考えられる。むしろ1980年代の「ジャンプ」こそが特殊な趣味にもとづいており、一過性のブームだったと言うべきなのだ。

映画・プロレス… 漫画家たちに影響を与えた当時の流行

そもそも1968年の創刊以来、「ジャンプ」ではマッチョな主人公が王道だったわけではない。創刊当初を支えたヒット作にはそうした特徴が見られず、1977年の格闘漫画『リングにかけろ』ですら、筋肉はあっても肉体が膨張したマッチョキャラではなかった。

筋骨隆々な主人公像が「ジャンプ」の主流となったのは、黄金期とも言われる1980年代のこと。『キン肉マン』や『北斗の拳』のほか、『魁!!男塾』『シティーハンター』『ジョジョの奇妙な冒険』といった作品が次々とヒットしていく。その背景にあったのが、アメリカから輸入されたマッチョ文化だ。

1980年前後のアメリカでは『ロッキー』シリーズや『ターミネーター』など、筋骨隆々な男性を主人公とする映画が大流行。アーノルド・シュワルツェネッガーやシルヴェスター・スタローンといった俳優が〝男らしさ〟の象徴となっていた。日本にもその文化が伝播していたことは、「北斗の拳」の主人公・ケンシロウがスタローンやアクションスターのブルース・リーをモデルとしていることからも明らかだろう。

さらに、1970年代後半~1980年代前半にかけてプロレスブームが到来したことも理由の1つ。『キン肉マン』にもテリー・ファンクやビル・ロビンソンといった、当時活躍したプロレスラーを思わせるキャラクターが数多く登場する。

そうした影響の一方で、日本独自の文脈としては1970年代頃の劇画ブームも忘れてはならない。写実的で線の濃い劇画的な絵柄は〝男らしい身体〟のデザインと相性がよく、先述したマッチョ系漫画の中にもその遺伝子が受け継がれている。つまりアメリカ由来のマッチョブームと日本的な劇画の融合によって、「ジャンプ」の特殊な環境が生まれたのではないだろうか。

もちろん現在連載中の漫画にも藤堂葵やオールマイトなど、マッチョキャラが存在する。しかし、漫画表現は時代によって大きな変化が生じるもの。現在主流となっているキャラクターデザインも、いつか特殊なものとして振り返られる日がくるかもしれない。

文=野木

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